このページでは【法令編】に続く【物化編】として、過去問等を参考に危険物取扱者試験の本試験を意識して作成した実践問題と解説を提供していきます。試験対策として、知識の確認や引っ掛けパターンの把握などにご活用ください。解答・解説はnoteで有料公開しています。(問題は随時追加中です)
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問題1(燃焼の種類)
次の物質のうち、通常どちらも表面燃焼であるものはどれか
1 ガソリン、エタノール
2 ナフタレン、金属粉
3 硫黄、木材
4 石炭、木炭
5 コークス、木炭
解答
正解は5です。
1 ガソリンとエタノールはどちらも蒸発燃焼です
2 ナフタレンは昇華によって固体から直接気体になり、その気体が燃える蒸発燃焼です。金属粉は表面燃焼です
3 硫黄は加熱による融解・蒸発を経て生じた気体が燃える蒸発燃焼です。木材は成分であるセルロース等が熱によって分解されて生じた可燃性ガス(一酸化炭素、メタン、エタン、水素等)が燃焼する分解燃焼です
4 石炭の主成分は多数の芳香環がメチレン鎖などで架橋された構造の巨大分子で、加熱による分解で生じた炭化水素ガスが燃焼するので、分解燃焼です。一方、木炭は木材の分解燃焼が終了して残った無定形炭素のかたまりなので、分解も蒸発もせず、表面燃焼します
5 コークスは石炭の分解燃焼が終了して残った無定形炭素なので、木炭と同様に表面燃焼です。
よって、どちらも表面燃焼なのは5になります。
- 表面燃焼:木炭、コークス、金属粉
- 蒸発燃焼:引火性液体、ナフタレン、硫黄、ろうそく、引火性固体
- 分解燃焼:紙、木材、石炭、プラスチック
- 自己燃焼(分解燃焼の一種):ニトロセルロース、セルロイド
木材と木炭、木炭と石炭などが紛らわしいですが、上で述べたメカニズムを理解しておけば大丈夫でしょう。
問題2(完全燃焼に必要な酸素量)
アセトン(CH3COCH3)を標準状態(0℃、1気圧、(1.013×105Pa))において、11.6g完全燃焼させた。このとき必要な理論上の酸素量として、次のうち最も近い値はどれか。
なお、1モルのアセトンが完全燃焼したときの反応式は、次の式で表される。
C3H6O + 4 O2 → 3 CO2 + 3 H2O
ただし、原子量は、炭素(C)12、水素(H)1、酸素(O)16 とする。
① 3L ② 6L ③ 9L ④ 12L ⑤ 18L
⇒ 解答・解説
解答
正解は⑤です。
アセトンの分子量を計算すると12×3+1×6+16×1=58となるから、アセトン1molは58g。
今回燃焼したアセトンは標準状態で11.6gだから、そのモル数を求めると、11.6(g)÷58(g/mol)=0.2(mol)となる。
反応式より、1molのアセトンが完全燃焼するのに酸素は4mol必要なので、0.2(mol)×4=0.8(mol)。
標準状態の気体の体積はモル数に気体定数を掛けて求められるので、必要な酸素の体積は0.8(mol)×22.4(L/mol)=17.92(L)となり、⑤の18Lが最も近い値となります。
問題3(消火剤の種類と特徴)
消火剤について、次のうち誤っているものを1つ選べ
1 一般の泡消火剤は、アルコール類やアセトン等の水溶性液体の火災に不適である
2 リン酸塩類を主成分とする消火粉末は、油火災と電気火災に適応するが、普通火災には適応しない
3 二酸化炭素は、極めて安定な不燃性ガスの性質と、空気より重い性質を利用した消火剤であり、窒息効果がある
4 ハロン1301は、窒息効果のほか、燃焼抑制効果(負触媒作用)ももっている
5 強化液は、炭酸カリウムを主成分とする水溶液であり、水による冷却効果に加え、再燃防止効果もある
⇒ 解答・解説
解答
正解は2です。
1 記述の通りです。水溶性液体は消泡性があるので一般の泡消火剤は効果がなく、水溶性液体に対する泡消火剤としては水溶性液体用泡消火剤(耐アルコール泡消火剤)を用います。
2 誤り。リン酸塩類の粉末消火剤とは「ABC消火剤」のことで、その名の通り、普通火災(A火災)・油火災(B火災)・電気火災(C火災)のすべてに適応します。これに対し、炭酸水素塩類の粉末消火剤は普通火災には適さないため、「BC消火剤」と呼ばれます。
3 記述の通りです。二酸化炭素消火剤は窒息効果のほか、消火器内に高圧充填されている液体の二酸化炭素が使用時にガス化する際の気化熱による冷却効果もあります。普通火災には適しませんが、油火災・電気火災に適しています。電気に絶縁性であるため、特に電気火災に有効です。消火剤による汚損がないこともメリットですが、密室で使用すると窒息の危険がある点に注意が必要です。
4 記述の通りです。ハロンとは、ハロゲン化炭化水素の総称(厳密には臭素を含むものに限定されますが、実際には臭素を含まないものもハロンと呼ばれています)で、消防法ではハロン1301、ハロン2402、ハロン1211が消火剤として認められ、このうちハロン1301が主に用いられています。ただし、これらのハロンはいずれもオゾン層破壊物質のため、すでに製造が禁止されており、現在使用されているものはリサイクルハロン、もしくはオゾン層破壊作用の少ない代替物質(HFC-23など)です。二酸化炭素消火剤と同様、消火剤による汚損がなく、電気に絶縁のため電気火災に特に有効です。しかし、ハロゲン化物と反応して発火したり有毒ガスを発生する物質(黄りん、金属粉、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルキル金属など)が存在する場合は使用できません。
5 記述の通りです。強化液消火剤は水分による冷却効果と炭酸カリウム等による抑制効果・再燃防止効果があるほか、水より凍りにくい(凝固点降下による)ため、寒冷環境でも使用できる利点があります。棒状の場合は水と同様、油火災・電気火災に不適ですが、霧状では普通火災・油火災・電気火災すべてに適応します。
問題4(静電気の帯電)
液体危険物が静電気を帯電しやすい条件について、次のうち誤っているものを1つ選べ
1 導電性の低い液体が、配管を流れたとき
2 圧力をかけられた液体が、ノズル、亀裂等の断面積の小さな開口部から噴出したとき
3 液体相互または液体と粉体等とを混合・撹拌したとき
4 直射日光に長時間、さらされたとき
5 液体が液滴となって、空気中に放射されたとき
⇒ 解答・解説
解答
正解は4です。
静電気の発生メカニズムは未解明の部分もありますが、2つの異なる物体の接触により接触界面で電荷の移動が起こり、それぞれの物体表面において正負いずれかの電荷が多い状態となり、その状態で両者を急速に分離すると中和できないまま両者が帯電した状態になることが主な原因とされています。
1 正しい。流動帯電と呼ばれます。配管と液体の接触により、配管壁に一方の電荷が選択的に吸着され、液体には反対電荷が残り、両者の電荷が中和される前に液体が流れ去ってしまうため、配管壁・液体の双方が静電気を帯びる現象です。導電率の高い液体では、流れ去る前に配管壁に吸着した電荷と中和できるため、流動帯電が起こりにくくなります。同様に、液体の流速が遅いほど流れ去る前に中和することが可能になるため流動帯電が起こりにくくなります。このため、ガソリンのような不良導体を配管内に流す場合、流速制限により静電気の帯電を抑えることが重要です。
2 正しい。噴出(噴霧)帯電と呼ばれます。液体がノズルを通過する際に、一方の電荷がノズル管壁に吸着され、反対電荷を帯びた液体は中和する間なく瞬時に空中に放出されて絶縁体である空気に囲まれるため、中和できないまま静電気を帯びた液滴となる現象で、流動帯電しにくい導電性液体でも帯電します。
3 正しい。撹拌帯電と呼ばれます。混合・撹拌により、液体同士または液体と粉体との間に接触と分離が速い速度で繰り返されるため、それぞれに一方の電荷が蓄積し静電気を帯びます。
4 誤り。日光が直接静電気を発生させることはありません。
5 2のようにノズル等を通過する場合に限らず、水のような極性液体から小さな液滴が生じる際には静電気を帯びやすく、分裂帯電(レナード効果)と呼ばれます。水の場合、表面には負電荷が、内部に正電荷が分布しているため、水が液滴に分裂すると、小さい液滴ほど負に、大きい液滴ほど正に帯電しやすいことによると考えられています。
問題5(空気の性状)
空気の一般的性状として、次のうち誤っているものはどれか
1 窒素には、可燃物の急激な燃焼を抑制する働きがある
2 空気と軽油を、ディーゼルエンジンで燃焼させると、窒素酸化物が発生しやすい
3 空気中の水蒸気は、可燃物の燃焼に影響を与える
4 乾燥した空気の組成は、季節、地域により大きく異なる
5 ろうそくの燃焼では、空気中の酸素を利用している
⇒ 解答・解説
解答
1 窒素は極めて安定な分子のため、他の分子と反応しにくい「不活性ガス」の一種であり、しかも窒素の酸化は吸熱反応であるため、可燃物とともに酸化されたとしても、燃焼に必要な熱を奪うことになり、燃焼を抑制する働きをします。
2 正しい。ディーゼルエンジンは大量の空気を高温にさらすので、空気中の窒素と酸素が反応して窒素酸化物(NOx)が発生しやすくなります。つまりNOxの窒素は空気由来です。一方、硫黄酸化物(SOx)の硫黄は燃料中に不純物として残存する硫黄由来です。両者の違いに注意しましょう。
3 水蒸気には窒息効果(酸素濃度を下げ、可燃物と酸素の接触を減らす)があるので、当然燃焼に影響します。
4 誤り。水蒸気を除いた乾燥空気の組成はほぼ一定です。一方で、空気中の水蒸気の割合は季節、地域により大きく異なります。したがって、「乾燥した」という言葉がなければ、この選択肢は正しいということになりますので注意しましょう。
5 正しい。当たり前すぎて不安になるかもしれませんが、要は、ろうそくは自己燃焼性物質(自身が酸素供給源)ではなく、また、酸化性物質から酸素を供給されて燃焼するわけでもない、ということがわかっているかどうかを聞いているだけの選択肢です。
問題6(凝固点降下)
次の文の( )内のAおよびBに当てはまる語句の組合せとして正しいものはどれか。
「溶液の凝固点は、純粋な溶媒の凝固点より低くなる。これを溶液の凝固点降下といい、純粋な溶媒の凝固点との差を凝固点降下度という。希薄溶液の凝固点降下度は、(A)の種類によらず、溶質の質量モル濃度に(B)する。」
1 A-溶液、B- 比例
2 A-溶質、B- 比例
3 A-溶質、B- 反比例
4 A-溶媒、B- 比例
5 A-溶媒、B- 反比例
⇒ 解答・解説
解答
正解は2です。
凝固点降下のわかりやすい例は、純粋な水より食塩水のほうが凍りにくいということです。どのくらい凍りにくくなるか(凝固点が下がるか)は、何が溶けているか(溶質の種類)に関係なく、どれだけの量が溶けているか(溶質の濃度)に比例するというのが凝固点降下の特徴です。このとき用いる濃度の種類が「質量モル濃度」(溶質mol/溶媒kg)であることにも要注意です。
なお、溶液は純溶媒より沸点が高くなる性質も示し、これを沸点上昇と呼びます。沸点上昇度も凝固点降下度と同様に、溶質の種類に関係なく溶質の濃度に比例しますので、あわせて覚えておきましょう。
問題7(コロイド溶液の特徴)
以下のコロイド溶液に関する現象とその現象の名前について、両方とも正しいものを1つ選べ
1 コロイド溶液に横から光束を当てると、コロイド粒子が光を散乱させるため、光の通り道が明るく光って見える — 電気泳動
2 コロイド溶液のコロイド粒子は、水分子が不規則に衝突しているため、ふるえるように不規則に振動している — チンダル現象
3 親水コロイド溶液に少量の電解質を加えると、コロイド粒子は互いに反発力を失ってくっつき合い、大きくなって沈澱する — 凝析
4 疎水コロイド溶液に親水コロイド溶液を加えると、親水コロイド粒子が疎水コロイド粒子を取り囲んで凝析を防ぐことがある — 保護コロイド
5 コロイド溶液に電極を入れ、直流の電源につなぐと、帯電しているコロイド粒子は同じ符号の電極側に移動する — ブラウン運動
⇒ 解答・解説
解答
正解は4です。
1 現象の記述は正しいですが、この現象は電気泳動ではなくチンダル現象です。
2 現象の説明は正しいですが、この現象はチンダル現象ではなくブラウン運動です。
3 凝析は「疎水コロイド溶液」に少量の電解質を加えることで沈殿する現象です。親水コロイドの場合は、「多量」の電解質を加えることで「塩析」が起こり沈殿します。
4 現象の記述、現象名ともに正しい。
5 ブラウン運動ではなく電気泳動についての記述ですが、コロイド粒子の移動先は「同じ符号」の電極ではなく「反対符号」の電極です。現象の記述、現象名ともに誤りです。
問題8(炭化水素の同定)
0℃、1.013×105Pa(1気圧)において、1.12Lの容器に封入されている気体の炭化水素に、過剰の酸素を圧入して完全燃焼させて冷却し、生成した水を集めたところ3.6gであった。
この炭化水素に適当な触媒を用いて水素を最大限に付加させたところ、炭化水素と同容量の水素を消費した。
この炭化水素として、次のうち正しいものはどれか
1 アセチレン
2 エチレン
3 エタン
4 プロパン
5 イソブチレン
⇒ 解答・解説
解答
正解は5です。
標準状態で1.12Lなので反応前のこの炭化水素は1.12(L)÷22.4(L/mol) = 0.05(mol)存在します。この気体の完全燃焼で生じた水は3.6(g)÷18(g/mol) = 0.2(mol)なので、0.2(mol)÷0.05(mol) = 4より、この炭化水素1分子から完全燃焼で水が4分子できる計算になります。完全燃焼により炭化水素の持つ水素原子はすべて水分子の中の水素となるので、この炭化水素には水分子(H2O)4つ分、すなわち8つの水素原子があります。選択肢中、水素原子を8つ持つのはプロパン(C3H8)とイソブチレン(C4H8)のみ。さらに付加反応で同容量の水素を消費したということは、分子中に二重結合を1つだけ持つということですので、イソブチレンだけが該当します。
不飽和炭化水素への水素の付加反応では、完全に反応が進んだ場合、二重結合1つにつき水素1分子、三重結合1つにつき水素2分子が消費されます。たとえば、炭化水素の2倍のモル数の水素が消費された場合、その炭化水素には二重結合が2つ、もしくは三重結合が1つ存在する、ということになります。
問題9(有機化合物の特性)
有機化合物の特性として、次のうち誤っているものはどれか
1 無機化合物に比べ、種類が多い
2 無機化合物に比べて、沸点及び融点は低い
3 成分元素は主体が炭素、水素、酸素、窒素等で、構成する元素の数は少ない
4 完全燃焼すると、二酸化炭素とアンモニアが発生するものが多い
5 結合の仕方の相違から組成が同じであっても性質の異なる異性体が存在する
⇒ 解答・解説
解答
正解は4です。
1 正しい。有機化合物は、炭素の数の違いだけでも、炭素1つのメタンやメタノールから、炭素数万個以上のタンパク質まで非常に多数に及び、さらに炭素・水素以外の構成原子の種類・数の違い、同じ組成でも結合のしかたの異なる異性体などがあって、その種類はほとんど無限に存在すると言えます。
2 正しい。金属結合やイオン結合で強固に結びついている無機化合物に比べ、有機化合物の分子同士は分子間力で集まって液体や固体になっているだけなので、沸点や融点は無機化合物より低くなります。
3 正しい。有機化合物の構成元素は炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、ハロゲン、一部の金属などに限られ、元素の種類としては多くありません。
4 誤り。有機化合物の骨格は炭素と水素で構成されており、炭素の完全燃焼により二酸化炭素が、水素の完全燃焼により水(水蒸気)が生成するため、ほとんどの有機化合物の完全燃焼では「二酸化炭素と水」が発生します。なお、窒素を含む有機化合物の場合でも、完全燃焼により生成するのはアンモニアではなく、二酸化窒素になります。
5 正しい。1の解説のとおり。
問題10(燃焼)
燃焼の一般的特徴について、次のA~Eのうち適切なもののみの組合せはどれか
A 粉塵の着火に必要なエネルギーは、粉塵の濃度により変化する
B 可燃性気体と酸素との混合気体は、圧力が高くなると酸化反応の速度が増して燃焼しやすくなる
C 可燃物は、燃焼熱が小さいほど燃焼しやすい
D 固体を粉末状にすると、融点や沸点が低くなるため燃焼しやすくなる
E 固体は、熱伝導率が小さいほど着火しやすい
1 A・B・C
2 A・B・E
3 A・C・E
4 B・C・E
5 C・D・E
⇒ 解答・解説
解答
正解は2です。
A 正しい。粉塵-空気混合物の発火に必要な最小エネルギー量を最小着火(発火)エネルギーと呼び、その値は圧力、温度、粉体の粒子径、粉塵の濃度等によって決まります。最小着火エネルギーが小さいほど、静電気による着火の危険が高くなります。
B 正しい。圧力が高くなると気体分子同士の衝突頻度が高くなるため、酸化に限らず反応速度は増します。
C 誤り。燃焼熱は、燃焼反応における反応熱のことで、可燃物が燃焼することによって発生する熱です。この熱が新たな燃焼反応の進行に必要なエネルギーを供給するので、燃焼熱が大きいほど燃焼しやすくなります。
D 誤り。粉末状にすると燃焼しやすくなるのは表面積が増えるためで、融点・沸点は変わりません。
E 正しい。熱伝導率が小さいほど、加熱されている部分から周囲へ熱が拡散しにくいため、加熱されている部分の温度が上がりやすく、発火点に達しやすくなります。
よって、A・B・Eが正しい選択肢なので、2が正解となります。
問題11(可燃性液体の物性値)
次の性状を有する可燃性液体についての説明で、正しいものはどれか。
液体の比重………………0.87
引火点……………………-18℃
沸点………………………56.5℃
蒸気比重(空気=1)……2.0
発火点……………………537℃
1 この液体2kgの容量は1.74Lである
2 空気中で引火するのに十分な濃度の蒸気を、液面上に発生する最低の液温は-18℃である
3 56.5℃になるまでは、飽和蒸気圧とならない
4 発生する蒸気の重さは、水蒸気の重さの約2倍である
5 炎を近づけても、537℃になるまでは燃焼しない
⇒ 解答・解説
解答
正解は2です。
1 誤り。この液体の比重0.87より1mLで0.87gなので、この液体2kgの容量をx(L)とすると、0.87(g):2000(g)=0.001(L):x(L)となります。よって、0.87x=2、両辺を0.87で割ってx=2.30(L) となります。正誤の判定だけなら、比重が1より小さいので水より軽い、したがって2㎏の容量は2Lより大きくなければならないから誤り、と判断してもかまいません。
2 正しい。引火点の説明です。
3 誤り。何℃であれ気液平衡に達すれば飽和蒸気圧となります。その温度における飽和蒸気圧が外圧と等しくなる温度が沸点です。
4 誤り。正しくは「空気」の重さの2倍です。液体の比重の基準(1.0)は水ですが、蒸気比重の基準は空気です。この違いを突いてくるのは引っ掛けの定番中の定番です。絶対に見逃さないようにしましょう。
5 誤り。炎を近づけても燃焼しないのは「引火点」未満です。「発火点」は点火源がなくても自ら燃焼を始める温度のことです。
問題12(完全燃焼に必要な酸素量の計算)
以下の各物質1molが完全燃焼する場合、酸素量が最も多く必要な物質はどれか
1 C3H7OH
2 CH3COCH3
3 C2H5OC2H5
4 CH3COC2H5
5 CH3COOC2H5
⇒ 解答・解説
解答
正解は3です。
解法としては、まず、選択肢の示性式をより単純な分子式に書き変えます。完全燃焼に必要な酸素量を求めるには、分子を構成する原子の種類と数がわかれば十分であり、分子の構造を考慮する必要がないからです。各選択肢を分子式に書き変えると
1 C3H8O
2 C3H6O
3 C4H10O
4 C4H8O
5 C4H8O2
となります。
炭素と水素、酸素の3元素のみからなる物質が完全燃焼すると、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)のみが生成しますので、燃焼物質中の炭素原子はすべて二酸化炭素分子中の炭素原子に、水素原子はすべて水分子の中の水素原子になります。したがって、燃焼物質中の炭素原子の数は燃焼後の二酸化炭素分子の数に、燃焼物質中の水素原子の数は燃焼後の水分子の数の2倍に等しくなります。このことから、完全燃焼に必要な酸素分子の数を x とすると、各選択肢の燃焼反応式は以下のとおりになります。
1 C3H8O + x O2 → 3 CO2 + 4 H2O
2 C3H6O + x O2 → 3 CO2 + 3 H2O
3 C4H10O + x O2 → 4 CO2 + 5 H2O
4 C4H8O + x O2 → 4 CO2 + 4 H2O
5 C4H8O2 + x O2 → 4 CO2 + 4 H2O
あとは左右両辺の酸素原子の数が等しくなるように x の値を求めるだけです。
例えば、選択肢1の場合、1+2x=3×2+4よりx=4.5となります。このとき、燃焼物質自身の持つ酸素原子の数を左辺に含めるのを忘れないように注意してください。
選択肢2以降も同様にして x を求めると、
1 x =4.5
2 x =4
3 x =6
4 x =5.5
5 x =5
となり、3が最も多くの酸素を必要とします。
問題13(泡消火剤)
泡消火剤の一般的な説明について、次のうち正しいものを1つ選べ
1 たん白泡消火剤の泡は界面活性剤の泡よりも熱に強いが、風による消泡や飛散が多い。
2 界面活性剤の泡消火剤は、油が染み込んだ繊維類の内部にも浸透しやすい。
3 界面活性剤の泡は、たん白泡消火剤の泡に比較して、液面上での広がり速度は小さいが、風の影響を受けにくい
4 化学泡消火器から生成する泡の気体は窒素である
5 たん白泡消火剤の起泡性は、界面活性剤よりも優れる
⇒ 解答・解説
解答
正解は2です。
1 誤り。たん白泡消火剤は、熱に強く耐火性があるほか、粘性に富むため流動性や展開性には劣りますが、その分、風による消泡や飛散が少ない利点があります。
2 正しい。界面活性剤というのは洗剤の主成分でもあります。洗剤が衣服の繊維に浸透して油汚れをより除くイメージをCMで見たことがあると思いますが、それを思い出せばこの選択肢が正しいことが理解できるでしょう。
3 誤り。正しくは逆で、界面活性剤の泡のほうが、たん白泡より流動性・展開性が大きいため、液面上を広がりやすく、風の影響も受けやすくなります。
4 誤り。化学泡消火器は、消火器の中にA剤(炭酸水素ナトリウムが主成分のアルカリ性水溶液)とB剤(酸性の硫酸アルミニウム水溶液)が別々に貯蔵されており、消火器を転倒させることで両液が混合されて反応し、二酸化炭素を大量に発生させ、この二酸化炭素が泡を生成します(炭酸飲料を思い浮かべればわかりやすいと思います)。したがって泡の気体は窒素ではなく二酸化炭素です。
5 誤り。起泡性はたん白泡より界面活性剤のほうが優れています。
問題14(静電気)
静電気に関する説明について、次のA~Eのうち正しいものはいくつあるか
A 静電気は、固体だけでなく液体にも発生する。
B 静電気は、湿度の低いときに蓄積しやすい。
C 静電気は、人体にも帯電する。
D 静電気の蓄積を防止する方法の1つに接地がある。
E 静電気による火災には、注水消火は絶対禁物で、電気火災に準じた消火方法がよい
⇒ 解答・解説
解答
正解は4つです。
A 正しい。流動帯電、噴霧帯電、撹拌帯電などはいずれも液体で発生します。
B 正しい。乾燥していると静電気がたまりやすいのは日常生活で体験しているとおりです。
C 正しい。人体は体液という電解質液で満たされた導体ですので、帯電した着衣等からの静電誘導を受けて帯電します。
D 正しい。物体を包んでいる空気は不良導体のため、その状態では帯電した物体から静電気が流れ出ることができず、蓄積された状態になります。これを防ぐ方法としてアース(接地)があり、アース線を通じて物質の静電気を地面に逃すことで静電気の蓄積を防ぐことができます。
E 誤り。静電気による火災は電気火災ではありません。発火後はすでに放電は終了しており、電源から電気が流れ続けているわけでもないので感電の危険もありませんから、電気火災に準じる必要がありません。
問題15(中和滴定)
中和滴定において、濃度0.1mol/Lの水溶液の酸、塩基、その際に用いられる指示薬の組合せで、次のうち誤っているものを1つ選べ。ただし、指示薬の変色域は、メチルオレンジがpH3.1~4.4、フェノールフタレインがpH8~10とする
1 酸:塩酸 塩基:炭酸ナトリウム 指示薬:メチルオレンジ
2 酸:硫酸、塩基:アンモニア水、指示薬:フェノールフタレイン
3 酸:酢酸、塩基:水酸化ナトリウム、指示薬:フェノールフタレイン
4 酸:シュウ酸、塩基:水酸化カリウム、指示薬:フェノールフタレイン
5 酸:硝酸、塩基:アンモニア水、指示薬:メチルオレンジ
⇒ 解答・解説
解答
正解は2です。
中和滴定では、中和が完了する滴下量に達したタイミングで、pHが急激に変化します。これをpHジャンプと呼び、このpHジャンプが起きた瞬間を、溶液の色の変化によって視覚的に認知できるようにするために用いるのが指示薬です。したがって、pHジャンプのpH範囲内に指示薬の変色域のpH範囲が含まれるように、適切な指示薬を選ばなければいけません。
その際、前提となる基礎知識は以下の通り。
主要な指示薬であるメチルオレンジの変色域は酸性側のpH3.1~4.4、フェノールフタレインの変色域は塩基性側のpH8~10
強酸と強塩基の滴定では、pHジャンプの範囲はpH3~11程度なので、メチルオレンジ・フェノールフタレイン双方の変色域を含む。
強酸と弱塩基の滴定では、pHジャンプの範囲はpH3~8程度なので、メチルオレンジの変色域は含むが、フェノールフタレインの変色域は含まない。
弱酸と強塩基の滴定では、pHジャンプの範囲はpH6~11程度なので、フェノールフタレインの変色域は含むが、メチルオレンジの変色域は含まない。
弱酸と弱塩基の滴定では明確なpHジャンプが見られないので、メチルオレンジ・フェノールフタレインいずれの指示薬も使えない。
強酸は塩酸、硫酸、硝酸など。弱酸は酢酸、シュウ酸など。強塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど。弱塩基はアンモニア、炭酸ナトリウムなど。
以上を踏まえて各選択肢を検討すると以下のようになります。
1 正しい。強酸に弱塩基を加える滴定なので、pHジャンプは酸性側→メチルオレンジ
2 誤り。強酸に弱塩基を加える滴定なので、pHジャンプは酸性側→メチルオレンジ
3 正しい。弱酸に強塩基を加える滴定なので、pHジャンプは塩基性側→フェノールフタレイン
4 正しい。弱酸に強塩基を加える滴定なので、pHジャンプは塩基性側→フェノールフタレイン
5 正しい。強酸に弱塩基を加える滴定なので、pHジャンプは酸性側→メチルオレンジ
問題16(電気防食)
地中に埋設された危険物配管を電気化学的な腐食から守るために、異種金属と接続する方法がある。配管が鉄製の場合、接続する金属として適切なものをすべて選べ
1 亜鉛
2 マグネシウム
3 ニッケル
4 銅
5 鉛
⇒ 解答・解説
解答
正解は1と2です。
金属の腐食は、酸化剤(=電子受容体)が存在する環境で金属が電子を放出して陽イオンになる酸化還元反応です。金属Aの腐食を防ぐためには、Aよりもイオン化しやすい(イオン化傾向が大きい)金属Bを共存させる方法が有効です。これにより、酸化剤はAではなくBから電子を奪うため(あるいはAから電子を奪ったとしても、AイオンはさらにBから電子を奪うため)、Bはイオン化してもAはイオン化を避けられます。いわばBが犠牲となってAを腐食から守っているわけです。このような腐食防止法を「電気防食」と呼びます。
よって解答としては、鉄よりイオン化傾向の大きい金属を選べばよいことになります。選択肢の金属をイオン化傾向の大きい順に並べると
Mg > Zn > Fe > Ni > Pb > Cu
となるので、亜鉛ZnとマグネシウムMgが正解です。
問題17(燃焼の種類)
可燃物と燃焼の形態の組合せとして、次のうち誤っているものはどれか
1 木材…………………………分解燃焼
2 木炭…………………………表面燃焼
3 硫黄…………………………分解燃焼
4 ニトロセルロース…………内部(自己)燃焼
5 軽油…………………………蒸発燃焼
⇒ 解答・解説
解答
正解は3です。
1 正しい。木材は主成分のセルロース等が加熱により分解して発生した一酸化炭素やメタンなどの可燃性ガスが燃焼するので分解燃焼です。
2 正しい。木炭は木材が燃焼した後に残る無定形(非晶質)炭素であり、炭素の単体ですから、それ以上分解することはなく、蒸発もしません。空気に触れている表面で固体の炭素自体が酸素と反応する表面燃焼です。
3 硫黄は単体なので分解はしません。加熱により発生した硫黄の気体が燃える蒸発燃焼です。
4 ニトロセルロースは自己反応性物質であり、分解によって酸素と可燃物を生成するため、外部からの酸素供給を必要とせず、点火源さえあれば一気に反応が進む内部燃焼(自己燃焼)です。なお、内部燃焼は分解燃焼の一種であるため、「ニトロセルロース・・・分解燃焼」という選択肢であっても誤りではありません。
5 軽油は構成成分の炭化水素が蒸発してできた可燃性ガスに引火して燃えるので、蒸発燃焼です。第4類危険物(引火性液体)の燃焼はすべて蒸発燃焼です。
問題18(燃焼範囲と引火点)
燃焼範囲と引火点の説明として、次のうち誤っているものはどれか
1 可燃性ガスと空気の混合気体において、燃焼が可能となる可燃性ガスの濃度の範囲を燃焼範囲という。
2 引火点は可燃性ガスの種類によって異なる。
3 同一の可燃性ガスでも、温度が高いと燃焼範囲の上限界が大きくなる。
4 燃焼範囲の下限値が高く上限値が低いものは、危険性が大きい。
5 同一の可燃性ガスでも、圧力によって引火点は異なる。
⇒ 解答・解説
問題19(化学電池の起電力)
次のA~Dの電池を起電力が大きい順番に並べたものとして、正しいものはどれか。
A マンガン乾電池
B 鉛蓄電池
C ニッケル水素蓄電池
D リチウムイオン二次電池
1 A>B>C>D
2 B>C>D>A
3 C>B>D>A
4 D>B>A>C
5 A>D>B>C
問題20(ヨウ素価)
次の物質のうち、ヨウ素価が一番大きいものはどれか
1. ツバキ油
2. ゴマ油
3. アマニ油
4. ナタネ油
5. ヒマシ油
解答
正解は4です。
1 正しい。燃焼範囲は混合気中の可燃性ガスの容量%(vol%)によって上限界(最大濃度)と下限界(最小濃度)を表します。(例:メタンガス 5.0%~15.0%)
2 正しい。引火点と燃焼範囲は可燃性ガスの種類によって異なります。
3 正しい。同一の可燃性ガスでも、温度によって燃焼範囲が異なります。温度が高いとより少ない空気でも燃焼可能なため燃焼範囲上限界は大きくなります。
4 誤り。燃焼範囲の下限値が高く上限値が低いものは燃焼可能な濃度範囲が狭いということなので、危険性が「小さい」と言えます。
5 正しい。引火点とは、燃焼範囲下限界の蒸気濃度に達する温度のことです。同一気体でも気圧が低いほど揮発しやすく、より低い温度で燃焼範囲下限界の蒸気濃度に達するため、引火点は低くなり、逆に気圧が高いと引火点は高くなります。
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