このページでは【法令編】に続く【物化編】として、過去問等を参考に危険物取扱者試験の本試験を意識して作成した実践問題と解説を提供しています。試験対策として、知識の確認や引っ掛けパターンの把握などにご活用ください。各問題文の下の[解答の表示/非表示]をクリックすることで解答・解説部分を表示したり隠したりできます。解答・解説を隠した状態で問題を解き、その後で解答・解説を表示して答え合わせや知識の確認をすると良いでしょう。(問題は随時追加中です)
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問題1(燃焼の種類)
次の物質のうち、通常どちらも表面燃焼であるものはどれか
1 ガソリン、エタノール
2 ナフタレン、金属粉
3 硫黄、木材
4 石炭、木炭
5 コークス、木炭
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解答
正解は5です。
1 ガソリンとエタノールはどちらも蒸発燃焼です
2 ナフタレンは昇華によって固体から直接気体になり、その気体が燃える蒸発燃焼です。金属粉は表面燃焼です
3 硫黄は加熱による融解・蒸発を経て生じた気体が燃える蒸発燃焼です。木材は成分であるセルロース等が熱によって分解されて生じた可燃性ガス(一酸化炭素、メタン、エタン、水素等)が燃焼する分解燃焼です
4 石炭の主成分は多数の芳香環がメチレン鎖などで架橋された構造の巨大分子で、加熱による分解で生じた炭化水素ガスが燃焼するので、分解燃焼です。一方、木炭は木材の分解燃焼が終了して残った無定形炭素のかたまりなので、分解も蒸発もせず、表面燃焼します
5 コークスは石炭の分解燃焼が終了して残った無定形炭素なので、木炭と同様に表面燃焼です。
よって、どちらも表面燃焼なのは5になります。
- 表面燃焼:木炭、コークス、金属粉
- 蒸発燃焼:引火性液体、ナフタレン、硫黄、ろうそく、引火性固体
- 分解燃焼:紙、木材、石炭、プラスチック
- 自己燃焼(分解燃焼の一種):ニトロセルロース、セルロイド
木材と木炭、木炭と石炭などが紛らわしいですが、上で述べたメカニズムを理解しておけば大丈夫でしょう。
問題2(完全燃焼に必要な酸素量)
アセトン(CH3COCH3)を標準状態(0℃、1気圧、(1.013×105Pa))において、11.6g完全燃焼させた。このとき必要な理論上の酸素量として、次のうち最も近い値はどれか。
なお、1モルのアセトンが完全燃焼したときの反応式は、次の式で表される。
C3H6O + 4 O2 → 3 CO2 + 3 H2O
ただし、原子量は、炭素(C)12、水素(H)1、酸素(O)16 とする。
① 3L ② 6L ③ 9L ④ 12L ⑤ 18L
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解答
正解は⑤です。
アセトンの分子量を計算すると12×3+1×6+16×1=58となるから、アセトン1molは58g。
今回燃焼したアセトンは標準状態で11.6gだから、そのモル数を求めると、11.6(g)÷58(g/mol)=0.2(mol)となる。
反応式より、1molのアセトンが完全燃焼するのに酸素は4mol必要なので、0.2(mol)×4=0.8(mol)。
標準状態の気体の体積はモル数に気体定数を掛けて求められるので、必要な酸素の体積は0.8(mol)×22.4(L/mol)=17.92(L)となり、⑤の18Lが最も近い値となります。
問題3(消火剤の種類と特徴)
消火剤について、次のうち誤っているものを1つ選べ
1 一般の泡消火剤は、アルコール類やアセトン等の水溶性液体の火災に不適である
2 リン酸塩類を主成分とする消火粉末は、油火災と電気火災に適応するが、普通火災には適応しない
3 二酸化炭素は、極めて安定な不燃性ガスの性質と、空気より重い性質を利用した消火剤であり、窒息効果がある
4 ハロン1301は、窒息効果のほか、燃焼抑制効果(負触媒作用)ももっている
5 強化液は、炭酸カリウムを主成分とする水溶液であり、水による冷却効果に加え、再燃防止効果もある
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解答
正解は2です。
1 記述の通りです。水溶性液体は消泡性があるので一般の泡消火剤は効果がなく、水溶性液体に対する泡消火剤としては水溶性液体用泡消火剤(耐アルコール泡消火剤)を用います。
2 誤り。リン酸塩類の粉末消火剤とは「ABC消火剤」のことで、その名の通り、普通火災(A火災)・油火災(B火災)・電気火災(C火災)のすべてに適応します。これに対し、炭酸水素塩類の粉末消火剤は普通火災には適さないため、「BC消火剤」と呼ばれます。
3 記述の通りです。二酸化炭素消火剤は窒息効果のほか、消火器内に高圧充填されている液体の二酸化炭素が使用時にガス化する際の気化熱による冷却効果もあります。普通火災には適しませんが、油火災・電気火災に適しています。電気に絶縁性であるため、特に電気火災に有効です。消火剤による汚損がないこともメリットですが、密室で使用すると窒息の危険がある点に注意が必要です。
4 記述の通りです。ハロンとは、ハロゲン化炭化水素の総称(厳密には臭素を含むものに限定されますが、実際には臭素を含まないものもハロンと呼ばれています)で、消防法ではハロン1301、ハロン2402、ハロン1211が消火剤として認められ、このうちハロン1301が主に用いられています。ただし、これらのハロンはいずれもオゾン層破壊物質のため、すでに製造が禁止されており、現在使用されているものはリサイクルハロン、もしくはオゾン層破壊作用の少ない代替物質(HFC-23など)です。二酸化炭素消火剤と同様、消火剤による汚損がなく、電気に絶縁のため電気火災に特に有効です。しかし、ハロゲン化物と反応して発火したり有毒ガスを発生する物質(黄りん、金属粉、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルキル金属など)が存在する場合は使用できません。
5 記述の通りです。強化液消火剤は水分による冷却効果と炭酸カリウム等による抑制効果・再燃防止効果があるほか、水より凍りにくい(凝固点降下による)ため、寒冷環境でも使用できる利点があります。棒状の場合は水と同様、油火災・電気火災に不適ですが、霧状では普通火災・油火災・電気火災すべてに適応します。
問題4(静電気の帯電)
液体危険物が静電気を帯電しやすい条件について、次のうち誤っているものを1つ選べ
1 導電性の低い液体が、配管を流れたとき
2 圧力をかけられた液体が、ノズル、亀裂等の断面積の小さな開口部から噴出したとき
3 液体相互または液体と粉体等とを混合・撹拌したとき
4 直射日光に長時間、さらされたとき
5 液体が液滴となって、空気中に放射されたとき
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解答
正解は4です。
静電気の発生メカニズムは未解明の部分もありますが、2つの異なる物体の接触により接触界面で電荷の移動が起こり、それぞれの物体表面において正負いずれかの電荷が多い状態となり、その状態で両者を急速に分離すると中和できないまま両者が帯電した状態になることが主な原因とされています。
1 正しい。流動帯電と呼ばれます。配管と液体の接触により、配管壁に一方の電荷が選択的に吸着され、液体には反対電荷が残り、両者の電荷が中和される前に液体が流れ去ってしまうため、配管壁・液体の双方が静電気を帯びる現象です。導電率の高い液体では、流れ去る前に配管壁に吸着した電荷と中和できるため、流動帯電が起こりにくくなります。同様に、液体の流速が遅いほど流れ去る前に中和することが可能になるため流動帯電が起こりにくくなります。このため、ガソリンのような不良導体を配管内に流す場合、流速制限により静電気の帯電を抑えることが重要です。
2 正しい。噴出(噴霧)帯電と呼ばれます。液体がノズルを通過する際に、一方の電荷がノズル管壁に吸着され、反対電荷を帯びた液体は中和する間なく瞬時に空中に放出されて絶縁体である空気に囲まれるため、中和できないまま静電気を帯びた液滴となる現象で、流動帯電しにくい導電性液体でも帯電します。
3 正しい。撹拌帯電と呼ばれます。混合・撹拌により、液体同士または液体と粉体との間に接触と分離が速い速度で繰り返されるため、それぞれに一方の電荷が蓄積し静電気を帯びます。
4 誤り。日光が直接静電気を発生させることはありません。
5 2のようにノズル等を通過する場合に限らず、水のような極性液体から小さな液滴が生じる際には静電気を帯びやすく、分裂帯電(レナード効果)と呼ばれます。水の場合、表面には負電荷が、内部に正電荷が分布しているため、水が液滴に分裂すると、小さい液滴ほど負に、大きい液滴ほど正に帯電しやすいことによると考えられています。
問題5(空気の性状)
空気の一般的性状として、次のうち誤っているものはどれか
1 窒素には、可燃物の急激な燃焼を抑制する働きがある
2 空気と軽油を、ディーゼルエンジンで燃焼させると、窒素酸化物が発生しやすい
3 空気中の水蒸気は、可燃物の燃焼に影響を与える
4 乾燥した空気の組成は、季節、地域により大きく異なる
5 ろうそくの燃焼では、空気中の酸素を利用している
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解答
1 窒素は極めて安定な分子のため、他の分子と反応しにくい「不活性ガス」の一種であり、しかも窒素の酸化は吸熱反応であるため、可燃物とともに酸化されたとしても、燃焼に必要な熱を奪うことになり、燃焼を抑制する働きをします。
2 正しい。ディーゼルエンジンは大量の空気を高温にさらすので、空気中の窒素と酸素が反応して窒素酸化物(NOx)が発生しやすくなります。つまりNOxの窒素は空気由来です。一方、硫黄酸化物(SOx)の硫黄は燃料中に不純物として残存する硫黄由来です。両者の違いに注意しましょう。
3 水蒸気には窒息効果(酸素濃度を下げ、可燃物と酸素の接触を減らす)があるので、当然燃焼に影響します。
4 誤り。水蒸気を除いた乾燥空気の組成はほぼ一定です。一方で、空気中の水蒸気の割合は季節、地域により大きく異なります。したがって、「乾燥した」という言葉がなければ、この選択肢は正しいということになりますので注意しましょう。
5 正しい。当たり前すぎて不安になるかもしれませんが、要は、ろうそくは自己燃焼性物質(自身が酸素供給源)ではなく、また、酸化性物質から酸素を供給されて燃焼するわけでもない、ということがわかっているかどうかを聞いているだけの選択肢です。
問題6(凝固点降下)
次の文の( )内のAおよびBに当てはまる語句の組合せとして正しいものはどれか。
「溶液の凝固点は、純粋な溶媒の凝固点より低くなる。これを溶液の凝固点降下といい、純粋な溶媒の凝固点との差を凝固点降下度という。希薄溶液の凝固点降下度は、(A)の種類によらず、溶質の質量モル濃度に(B)する。」
1 A-溶液、B- 比例
2 A-溶質、B- 比例
3 A-溶質、B- 反比例
4 A-溶媒、B- 比例
5 A-溶媒、B- 反比例
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解答
正解は2です。
凝固点降下のわかりやすい例は、純粋な水より食塩水のほうが凍りにくいということです。どのくらい凍りにくくなるか(凝固点が下がるか)は、何が溶けているか(溶質の種類)に関係なく、どれだけの量が溶けているか(溶質の濃度)に比例するというのが凝固点降下の特徴です。このとき用いる濃度の種類が「質量モル濃度」(溶質mol/溶媒kg)であることにも要注意です。
なお、溶液は純溶媒より沸点が高くなる性質も示し、これを沸点上昇と呼びます。沸点上昇度も凝固点降下度と同様に、溶質の種類に関係なく溶質の濃度に比例しますので、あわせて覚えておきましょう。
問題7(コロイド溶液の特徴)
以下のコロイド溶液に関する現象とその現象の名前について、両方とも正しいものを1つ選べ
1 コロイド溶液に横から光束を当てると、コロイド粒子が光を散乱させるため、光の通り道が明るく光って見える — 電気泳動
2 コロイド溶液のコロイド粒子は、水分子が不規則に衝突しているため、ふるえるように不規則に振動している — チンダル現象
3 親水コロイド溶液に少量の電解質を加えると、コロイド粒子は互いに反発力を失ってくっつき合い、大きくなって沈澱する — 凝析
4 疎水コロイド溶液に親水コロイド溶液を加えると、親水コロイド粒子が疎水コロイド粒子を取り囲んで凝析を防ぐことがある — 保護コロイド
5 コロイド溶液に電極を入れ、直流の電源につなぐと、帯電しているコロイド粒子は同じ符号の電極側に移動する — ブラウン運動
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解答
正解は4です。
1 現象の記述は正しいですが、この現象は電気泳動ではなくチンダル現象です。
2 現象の説明は正しいですが、この現象はチンダル現象ではなくブラウン運動です。
3 凝析は「疎水コロイド溶液」に少量の電解質を加えることで沈殿する現象です。親水コロイドの場合は、「多量」の電解質を加えることで「塩析」が起こり沈殿します。
4 現象の記述、現象名ともに正しい。
5 ブラウン運動ではなく電気泳動についての記述ですが、コロイド粒子の移動先は「同じ符号」の電極ではなく「反対符号」の電極です。現象の記述、現象名ともに誤りです。
問題8(炭化水素の同定)
0℃、1.013×105Pa(1気圧)において、1.12Lの容器に封入されている気体の炭化水素に、過剰の酸素を圧入して完全燃焼させて冷却し、生成した水を集めたところ3.6gであった。
この炭化水素に適当な触媒を用いて水素を最大限に付加させたところ、炭化水素と同容量の水素を消費した。
この炭化水素として、次のうち正しいものはどれか
1 アセチレン
2 エチレン
3 エタン
4 プロパン
5 イソブチレン
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解答
正解は5です。
標準状態で1.12Lなので反応前のこの炭化水素は1.12(L)÷22.4(L/mol) = 0.05(mol)存在します。この気体の完全燃焼で生じた水は3.6(g)÷18(g/mol) = 0.2(mol)なので、0.2(mol)÷0.05(mol) = 4より、この炭化水素1分子から完全燃焼で水が4分子できる計算になります。完全燃焼により炭化水素の持つ水素原子はすべて水分子の中の水素となるので、この炭化水素には水分子(H2O)4つ分、すなわち8つの水素原子があります。選択肢中、水素原子を8つ持つのはプロパン(C3H8)とイソブチレン(C4H8)のみ。さらに付加反応で同容量の水素を消費したということは、分子中に二重結合を1つだけ持つということですので、イソブチレンだけが該当します。
不飽和炭化水素への水素の付加反応では、完全に反応が進んだ場合、二重結合1つにつき水素1分子、三重結合1つにつき水素2分子が消費されます。たとえば、炭化水素の2倍のモル数の水素が消費された場合、その炭化水素には二重結合が2つ、もしくは三重結合が1つ存在する、ということになります。
問題9(有機化合物の特性)
有機化合物の特性として、次のうち誤っているものはどれか
1 無機化合物に比べ、種類が多い
2 無機化合物に比べて、沸点及び融点は低い
3 成分元素は主体が炭素、水素、酸素、窒素等で、構成する元素の数は少ない
4 完全燃焼すると、二酸化炭素とアンモニアが発生するものが多い
5 結合の仕方の相違から組成が同じであっても性質の異なる異性体が存在する
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解答
正解は4です。
1 正しい。有機化合物は、炭素の数の違いだけでも、炭素1つのメタンやメタノールから、炭素数万個以上のタンパク質まで非常に多数に及び、さらに炭素・水素以外の構成原子の種類・数の違い、同じ組成でも結合のしかたの異なる異性体などがあって、その種類はほとんど無限に存在すると言えます。
2 正しい。金属結合やイオン結合で強固に結びついている無機化合物に比べ、有機化合物の分子同士は分子間力で集まって液体や固体になっているだけなので、沸点や融点は無機化合物より低くなります。
3 正しい。有機化合物の構成元素は炭素、水素、酸素、窒素、硫黄、ハロゲン、一部の金属などに限られ、元素の種類としては多くありません。
4 誤り。有機化合物の骨格は炭素と水素で構成されており、炭素の完全燃焼により二酸化炭素が、水素の完全燃焼により水(水蒸気)が生成するため、ほとんどの有機化合物の完全燃焼では「二酸化炭素と水」が発生します。なお、窒素を含む有機化合物の場合でも、完全燃焼により生成するのはアンモニアではなく、二酸化窒素になります。
5 正しい。1の解説のとおり。
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