今年もForbes誌が世界長者番付(10億ドル以上の純資産を持つ資産家=Billionaireビリオネアのリスト)を発表したので、内容を見てみました。
https://www.forbes.com/billionaires/

2020年世界長者番付

億万長者にもコロナの影響

新型コロナの世界的感染拡大は億万長者の方々の資産にも影響し、番付を確定した3月18日の時点で、世界のビリオネアの人数は昨年比で58人減少、番付確定のわずか12日前との比較では226人も減少したそうです。新型コロナの経済への影響がいかに急激に拡大しているかがよくわかります。

結果として、今年の世界のビリオネアの総数は2095人となりました。ビリオネアの座を維持した人たちも51%が資産を減らし、ビリオネアの総資産は8兆ドルで、昨年と比べて7000億ドル減少しました。金額が大きすぎて全く実感がわきませんが、とりあえず億万長者も大変みたいですね。

世界1位は3年連続でAmazon創業者のジェフ・ベゾス氏で、資産額は約12兆4300億円(1130億ドル)です。昨夏に離婚した元妻のマッケンジー・ベゾスさんに360億ドルの財産分与をおこないましたが、Amazonの株価が昨年比で15%上がったおかげで、昨年の番付からの資産額の減少は180億ドルにとどまっています。財産分与を受けた元妻のマッケンジーさんも22位にランクインしました。

日本人ビリオネアは26人。多いのか少ないのかよくわかりませんが、たぶん少ないんでしょうね。日本人トップはファーストリテイリング創業者の柳井正氏で47位、資産額は約2兆1670億円 (197億ドル)です。

国別で見てみると

世界長者番付は上位50人が取り上げられることが多いので、僕も今回上位50人に絞ってデータをまとめてみました。

トップ50に入った富豪の国別人数を見てみると、以下のとおりになります。

1. 米国 24人
2. 中国 8人
3. フランス 5人
4. ロシア 3人
5. ドイツ 2人
5. 日本 2人
6. スペイン 1人
6. メキシコ 1人
6. インド 1人
6. カナダ 1人
6. イタリア 1人
6. ブラジル 1人

日本の2人は、上記の柳井氏と、もう1人はキーエンス創業者の滝崎武光氏です。

トップ50の国別資産総額のランキングは以下のとおりになります。

1. 米国 118.8兆円
2. 中国 23.0兆円
3. フランス 20.5兆円
4. スペイン 6.1兆円
5. ロシア 6.0兆円
6. ドイツ 5.8兆円
7. メキシコ 5.7兆円
8. 日本 4.1兆円
9. インド 4.0兆円
10. カナダ 3.5兆円
11. イタリア 2.7兆円
12. ブラジル 2.2兆円

どちらのランキングでも米国の存在が圧倒的ですが、これに2位の中国、3位のフランスを加えると、人数・資産総額とも4分の3を占めます。米中両国はGDPでも世界1位と2位ですので、国の経済力の反映ともいえますが、3位以降は必ずしもGDPの順位と一致しません。昔から言われていることですが、日本は大富豪が生まれにくい社会制度になっているので、GDP世界3位の経済規模ほどには、上記のランキングでは存在感がないのでしょう。それがよいことなのか悪いことなのかはよくわかりませんが。

創業者か、その子孫か

トップ50にランクインした億万長者の経歴をみると、だいたいが、大企業の創業者か、その子孫です。あなたが創業者の子孫でないのであれば、億万長者になるには、起業して、その会社を世界的な超大企業に成長させるしか方法はないということですね。もっとも、創業者といっても、イノベーションを起こした企業もあれば、ロシアの新興財閥もあるので一緒にはできない面もあります。

超大企業といえば「GAFAM」ですが、トップ50にランクインしているGAFAM関連の億万長者は以下のとおり。

Google

13位 ラリー・ペイジ(共同創業者)約5兆5990億円(509億ドル)
14位 セルゲイ・ブリン(共同創業者)約5兆4010億円(491億ドル)

Amazon

1位 ジェフ・ベゾス(創業者)約12兆4300億円(1130億ドル)
22位 マッケンジー・ベゾフ(創業者元妻)約3兆9600億円 (360億ドル)

Facebook

7位 マーク・ザッカーバーグ(共同創業者)約6兆170億円(547億ドル)

Microsoft

2位 ビル・ゲイツ(共同創業者)約10兆7800億円(980億ドル)
11位 スティーブ・バルマー(元CEO)約5兆7970億円(527億ドル)

GAFAMのうち、Apple関連の億万長者はトップ50には入っていませんね。

GAFAMを追う中国の巨大IT企業「BATH」(B:バイドゥ A:アリババ T:テンセント H:ファーウェイ)のうち、アリババとテンセントは創業者がトップ50に入っています。

Alibaba(阿里巴巴)

17位 ジャック・マー(馬雲)(創業者)約4兆2680億円 (388億ドル)

Tencent(騰訊)

20位 ポニー・マー(馬化騰)(創業者)約4兆1910億円 (381億ドル)

来年以降もGAFAMの優位は当面ゆるがないでしょうし、BATHの存在感もさらに増していくのでしょう。ただ、変化の非常に激しい時代なので、5年後にはランキングの顔ぶれが一変している可能性もあります。

「人類史上最大の富豪」は・・・

ところで、「人類史上最大の富豪」は誰だかご存じでしょうか。国家の富を思いのままに独占できた前近代の君主などは別として、企業活動によって得た富に限定した場合、「人類史上最大の富豪」の称号はある人物のものと考えられています。

その人物とは、”石油王”ジョン・D・ロックフェラー(1839~1937)です。

スタンダードオイル社の創業者で、自動車の急速な普及にともなうガソリン需要の増大に乗じて事業を拡大し、ライバル企業を容赦なくたたきつぶす冷酷さと積極的な経営戦略によって、米国の石油市場の90%を独占する巨大企業を築き上げました。一方で、熱心な慈善活動家でもあり、ロックフェラー財団を設立して世界中で医療・教育・科学振興などに資金提供を行いました。米国史上初のビリオネアと言われ、亡くなった時点の資産は14億ドルですが、これは当時の米国のGDP(920億ドル)の1.5%にあたります。これを現代に当てはめると、20兆5400億ドル(2018年米国GDP)×1.5%=3081億ドルとなり、ジェフ・ベゾスの1130億ドルも遠くおよびません。

とはいえ、ジェフ・ベゾス氏は56歳、今後もAmazonの優勢が続くとすれば、いずれジョン・D・ロックフェラーから「人類史上最大の富豪」の称号を譲り受ける日が来るかもしれません(この記事の執筆時点ですでにベゾス氏の資産は1247億ドルに増えています)。あるいは、中国や新興国の若い起業家の中からその人が現れてくることも考えられます。僕でないことだけは確かです。

ちなみにジョン・D・ロックフェラーについては、こんなエピソードも伝えられています。

ロックフェラーが亡くなる直前、友人だった自動車王ヘンリー・フォードが病床を見舞った際、ロックフェラーが「さらばだ、天国で会おう」と言うと、フォードは「あなたが天国に行けるならね」と返したそうです。

フォードもなかなかひどい友人ですね。死の床についている相手にそんなこと言わなくてもいいのに・・・・

どうせ天国に行けそうもない僕としては、天国に行けなくてもかまわないのでビリオネアにしてくれないかと、神に願うのでした。