もうだいぶ過ぎてしまいましたが、今年(2017年)の立春は2月4日でした。立春の前日、2月3日が節分で、皆さん、恵方巻きを頬張ったり、豆まきをしたり、鬼のお面をかぶって豆をぶつけられたりしたことでしょう。

ところで私はスケジュール帳兼簡易日記としてGoogleカレンダーを利用しているのですが、そのGoogleカレンダーの表示を見ると、なぜか、2月3日が立春になっています(冒頭の画像をご覧ください)。なんでこんな不思議なことになっているのかと思って調べてみたところ、勉強になった点があったので、記事にしてみます。

まず最初に、「Googleカレンダーに立春なんか表示されてないけど?」という方が大半と思いますので、この点について説明しておきたいと思います。確かに通常の設定では立春は表示されません。カレンダー設定の「代替カレンダー」という項目が通常は「代替カレンダーを使用しない」になっていると思いますが、ここで「中国暦 - 繁体字」もしくは「中国暦 - 簡体字」というのを選択すると、カレンダーに旧暦(太陰太陽暦、より精確には中国の時憲暦)の日付が併記されるようになり、立春などの二十四節気も一緒に表示されるようになります。私は個人的に旧暦の日付も把握しておきたいので、この設定を使っています(厳密には日本で現在旧暦と呼んでいるのは日本最後の公式な太陰太陽暦である天保暦とも、中国の時憲暦とも異なるものですが、大体のところは一致します)。


さて、立春などの二十四節気は太陰太陽暦と密接な関係があり、二十四節気を基準にして暦が作られます。基準となる二十四節気の求め方は、Googleカレンダーが使用している中国の時憲暦も、江戸時代の天保暦も、現代日本の旧暦も共通であり、太陽の天球上の通り道である黄道を24等分する「定気法」によって求められます。したがって、Googleカレンダーが使用しているのが時憲暦だから立春日が異なる、というわけではありません。

上記の定気法によって求められる立春は、実は「月日」にとどまらず、「時刻」まで定まり、暦では、その立春の時刻の属する日が立春日となります。2017年の立春時刻は、世界標準時で2月3日15時34分でしたが、この時刻は日本標準時では2月4日0時34分、中国標準時では2月3日23時34分です。このため立春日は日本では2月4日、中国では2月3日となります。つまり、日本も中国も同時に立春時刻を迎えるのですが、両国の時差のため、その時刻には日本はすでに2月4日になっているのに、中国ではまだ2月3日であり、このために、両国の立春日は2月4日と3日で異なってしまうわけなのです。

日本と中国の時差はわずか1時間なので、ほとんどの年で立春日は共通であり、今年のように両国の立春日が異なるのは実はかなり珍しい現象で、1984年以来のことです。
Googleカレンダーに表示される「中国暦」の立春日は、当然のことながら中国の立春日なのですが、ほとんどの年の場合、それは日本の立春日と一致するため気にはなりません。しかし今年はたまたま日中両国の立春日が異なる年だったために、日本の立春日と異なる日が「立春」と表示されるという妙なことになってしまったのです。

そもそも、代替カレンダーの選択肢の中に「日本旧暦」というのがあれば、私もそれを選択して旧暦を表示させますし、そうすれば当然、立春も日本の立春日が表示されることでしょうから、何の問題もありません。「日本旧暦」という選択肢がないため、旧暦表示のためには「中国暦」を選択するほかなく、そのせいで今回のような不思議な事態が出現してしまったというわけです。

実は、「日本旧暦」はありませんが、「中国暦」とは別に「朝鮮民暦」という選択肢があります。表示させてみると、具体的にどの暦法によるものなのかはわかりませんが、太陰太陽暦のようで、日本の旧暦や中国の時憲暦と日付は一致しています(ただし二十四節気は表示されません)。となると、「中国暦」と「朝鮮民暦」があるのに、なぜ「日本旧暦」がないのか、いよいよ納得できなくなります。「同じ太陰太陽暦なのだから、中国暦を使えばよい」というなら、「朝鮮民暦」だっていらないはずです。「中国暦」と「朝鮮民暦」があって「日本旧暦」がない合理的な理由は見当たらず、何か政治的な意図でもあるのかと疑ってしまいます。まあ、それはともかくとして、今回のような事態を避けるため、代替カレンダーの選択肢に「日本旧暦」を追加することをGoogleに強く要望したいと思います。ついでに、祝日の名称が英語表示なのも何とかしてほしいところです。日本の祝日がなんで英語で表示されているのか全く意味不明ですので。