汎兮堂箚記 #11 『へんな古代生物 special edition』(北園大園)
書名
『へんな古代生物 special edition』(電子書籍版)著者
北園大園刊行
株式会社彩図社 2012年8月発行(電子版)(紙書籍単行本は2009年8月発行)メモ
著者は古生物の専門家ではありませんが、古生物の奇妙さに興味を持ち、古生物に関する書籍をいろいろ調べていくうちに、この書籍の執筆につながったとのことです。
1話で1種の生物を採り上げる形式で、1話が非常に短く、文章も簡潔なので、読みやすいという点では確かに読みやすいのですが、その分、内容は浅いものにならざるを得ません。古生物に興味のある人には周知の内容も多く、期待外れに感じる恐れがありますが、古生物初心者の需要に応えるのに十分な内容はありますので、初心者用の読みやすい入門書としてはよさそうです。
この本の特徴は、1話ごとに必ずオチがついていることです。おそらく著者(&出版社)としては、これを最大の売りとしてこの本を書いたのだろうと推察されます。つまり、「普通に書いたら硬くなってしまう内容なので、笑いをまじえて面白く読めるようにしました」というわけでしょう。しかし人を笑わせるというのは決して簡単なことではなく、プロの芸人をも苦しめるほどです。まして文章だけで人を笑わせるのは至難の業と言わねばなりません。その至難の業に挑んだチャレンジ精神には敬意を表しますが、著者や出版社がねらったとおりに読者を笑わせることができているかどうかは評価の分かれるところでしょう。執筆時点からかなり時間が経ってネタが古くなってしまったという点を割り引く必要はありますが、僕個人としては、オチの部分はなくてもいいのではないかと思います。
そもそも、古生物という題材自体が、実は、非常に興味深く、面白いものだと僕は思います。この本題をしっかり掘り下げたほうが、無理矢理笑わせようとして考えたネタより、はるかに面白くなるはずです。「あとがき」を読むに、著者ご自身も古生物の面白さに魅せられたからこそ、この本を書かれたのだと思われますし、古生物の面白さを伝えたいという愛はたしかに感じました。それだけに、各話の無理矢理のオチの部分はすべて割愛して、本題の古生物についてさらに掘り下げた内容の、本当の「special edition」をぜひ読んでみたいと願います。
汎兮堂箚記史上、最も辛口の評価となってしまったかもしれませんが、世の中への影響力はほぼ皆無ですので、関係各位にはご容赦を願う次第です。
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