兵庫県立美術館で開催中の『恐竜図鑑-失われた世界の想像/創造』展に行ってきました。恐竜展ではなく、恐竜がいかに描かれてきたかという恐竜美術史の展覧会です。


展示品の一部は撮影OKなので、主なものを紹介しておきます。こんな下手な写真じゃ満足できないという方は、美術館に行って本物を観覧しましょう。


まずは、間違った復元図にもとづくイグアノドン像がエントランスでお出迎え。


言わずもがなの説明かもしれませんが、鼻の上の角は本当は親指なのですが、1878~80年にベルギーのベルニサール炭鉱で全身骨格が発掘されるまでは、イグアノドンはこの姿だと考えられていました。


次はロバート・ファレン『ジュラ紀の海の生き物-ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)』という油彩画です。


1811年に魚竜イクチオサウルス、1821年に首長竜プレシオサウルスの化石を発見した化石ハンター、メアリー・アニングの功績をたたえるため、1830年、友人のヘンリー・ディラ・ビーチはみずから描いた水彩画を原画としてジョージ・シャープに版画作製を依頼、その版画の売上をアニングに贈りました。いい友人ですね。で、その20年後に、その版画にほぼ忠実に描かれたのがこの油彩画です。絵の中心ではイクチオサウルスがプレシオサウルスの首に噛みつき、空には翼竜が舞い、海中では食物連鎖が繰り広げられていて、見ているとワクワクしてくる絵です。黎明期の恐竜画には、神話の中の化け物めいたものが多いのですが、この絵(そしてこの絵の元になった版画・水彩画)は、当時の最新の科学的知見に忠実に描かれている点が注目に値します。



これはベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズ『ジュラ紀初期の海棲爬虫類』という油彩画です。この絵でもプレシオサウルスとイクチオサウルスが対決していますが、両者とも陸に上がってしまって躍動感に欠けるように思いますが、なんでこの構図なんでしょうか。それからプレシオサウルスの首細すぎませんか?頭小さすぎません?プレシオサウルスには悪いけど、絶対勝てないから逃げた方がいい。

次もホーキンズの油彩画『白亜紀の生き物-ニュージャージー』です。

肉食のドリプトサウルスが草食のハドロサウルスを襲っているのですが、双方とも二本足で直立していて、中に人が入っているようにしか見えません。

なんかプロレスみたいです。これからドリプトサウルスが必殺技を仕掛けようとしているところでしょうか。

次はズデニェク・ブリアンによるカッコいいイグアノドンです。

かつての復元図では鼻の上にあった角が、ちゃんと正しい場所の親指に移っています。体は直立してしっぽは地面に引きずるという、僕らが子供の頃の図鑑に載っていた古典的な恐竜のスタイルです。皆さんご存知のとおり、この姿勢ではまともに動けないので、現在正しいと考えられているのは体をもっと前傾させて、宙に浮かせたしっぽでバランスを取る姿勢です。化石発見当初からのイグアノドンの復元図の変遷をわかりやすく比較した模型の展示も撮影OKでしたので、紹介しておきます。

恐竜そのものの展覧会はよく開催されますし、福井をはじめとして恐竜博物館も各地にありますが、恐竜美術をテーマにした美術館の展覧会というのはあまり聞かないので、非常に面白いテーマだと思いました。おかげで、子供の頃のワクワク感が呼び醒まされて、最新の恐竜図鑑ではなく、子供の頃に熱中した当時の図鑑を読みたくなりましたが、残念ながら、もう実家にもないでしょうね。