ビリオネアの人数により色分けした世界地図

ビリオネア減少、資産額も減少

今年もForbes誌が恒例のビリオネアリスト(10億ドル以上の純資産を持つ資産家のリスト)、いわゆる世界長者番付を発表しました。春の風物詩ですね。

過去記事

2020年版世界長者番付と人類史上最大の富豪

2021年版世界長者番付

【イーロン・マスク1位】2022年版世界長者番付【昨年の予想答え合わせ】


今年3月10日の時点で、世界のビリオネアは合計2640人で、昨年の2668人から減少、さらに、半数近くのビリオネアが昨年より資産を減少させました。その結果、全ビリオネアの合計資産額も昨年の12.7兆ドルから5000億ドル減らして12.2兆ドルとなっています。大富豪たちにとってもこの1年は逆風だったようです。


国別では、米国のビリオネアは昨年と同じ735人で、もちろん世界最多、その合計資産額は4.5兆ドルで、昨年の4.7兆ドルからは2000億ドル減少となりました。国別2位も昨年と変わらず中国(香港・マカオ含む 以下同じ)ですが、人数は昨年の607人から45人減らして562人、合計資産額は昨年の2.3兆ドルから3000億ドル減らして約2兆ドルとなりました。3位も昨年と変わらずインドで、人数は166人から169人に微増しましたが、合計資産額は7500億ドルから6750億ドルに減少しています。


今年も首位交代-マスク首位転落、LVMH総帥が1位に

何はともあれ、今年もまずはトップ50の顔ぶれを野次馬的に見ておきましょう。


昨年、ジェフ・ベゾスから首位を奪ったイーロン・マスクですが、1年で首位から転落し、資産額もこれまでの右肩上がりから減少に転じています。かわって首位に躍り出たのは、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)とクリスチャン・ディオールの会長で、ファッション界の帝王と呼ばれるベルナール・アルノーです。フランス人としてのみならず、ヨーロッパ人として初の首位となります。

イーロン・マスクの首位陥落については、ツイッター社の高額買収によりテスラ社の株価が下落したことが響きました。もともとマスク氏の右肩上がりの資産額増加はテスラ社の株価上昇を反映していた面が大きかったので、株価が下がれば資産額も目減りすることは避けられません。

ベルナール・アルノー氏の首位獲得について、新聞は「コロナ禍の金融緩和マネーを背景に高級ブランドの業績が伸び」たからだと言うのですが、それは一昨年や昨年の番付の話ではないんですかね。ただ、アルノー氏だけでなく、高級ブランド関連のビリオネアたちは揃って資産を増やし順位を上げているので、高級ブランド業界には追い風だったことは確かなようです。まさか、経済の先行きが不透明な中、お金持ちたちが高級ブランド品を「安全資産」として買い漁っているとかじゃないでしょうね・・・

昨年まで、トップ10のうち首位を含む8人を米国が占めていましたが、今年は7人に減り、首位も失っています。それでも10人中7人ですから、圧倒的な存在感には変わりありません。

順位の変動はかなりありますが、トップ50の顔ぶれ自体はそれほど変わっていません。それでも何人かは入れ替わりがあり、特に37位のマーク・マテシッツはまだ30歳の若さですが、今回初めてのビリオネアリスト登場でいきなりトップ50にランクインしています。実は、彼は「翼を授ける」で有名なレッドブルの創業者ディートリッヒ・マテシッツ(昨年51位)の一粒種で、昨年10月になくなった父の遺産を受け継いだことでビリオネアの仲間入りしたわけです。レッドブルのおかげでまさに翼を授けられたわけですね。

日本人ビリオネア2023

日本人ビリオネアの人数は昨年と同じ40人でした。昨年は世界トップ50から日本人は姿を消しましたが、今年はユニクロの柳井氏が39位となり2年ぶりにトップ50に復帰しました。日本人ビリオネアの資産額合計は1511億ドルで、昨年の1545億ドルよりわずかに減少しています。日本人ビリオネアの資産をすべて合わせても、世界1位のベルナール・アルノー、2位のイーロン・マスクに及びません。


相変わらず名だたる企業の関係者が名をつらねており、40人中35人が昨年に引き続いてのランクインです。

ちなみに、日本人26位の襟川恵子・陽一夫妻は、昨年のランキングでは「襟川恵子&陽一」と一組にされ、合計資産25億ドルで1238位にランクされていましたが、今年は二人がそれぞれ個人として扱われ、資産も二分されているため順位は大幅に落ちていますが、合計資産が減ったわけではありません。同じ夫婦なのに、なぜ去年は夫婦一括で扱い、今年は個人別々に扱っているのか、理由は不明です。

国別データいろいろ

では、今年も、全ビリオネア(2640人)を対象に、主に国別に集約したデータを見ていきたいと思います。

ビリオネアの国別人数

  1. 米国  735人 (±0人)
  2. 中国(香港・澳門含む) 562人 (-45人)
  3. インド 169人 (+3人)
  4. ドイツ 126人 (-8人)
  5. ロシア 105人 (+27人)
  6. イタリア 64人 (+12人)
  7. カナダ  63人 (-1人)
  8. 英国  52人 (+2人)
  9. 台湾     52人 (+1人)
  10. ブラジル    51人 (-11人)

    ※カッコ内は昨年との比較

10位ブラジルの後は、豪州(47人)、フランス(43人)、スイス(41人)と来て、次が日本(40人)となります。


上位10ヶ国の顔ぶれも、これらの国で全体の4分の3を占める点も、昨年と変わりません。米中両国の突出ぶりも変わりませんが、中国がかなり人数を減らしたため、両国の占有率が50%を切りました。一方、注目すべきはロシアで、戦争と西側諸国からの経済制裁で国力を消耗しているはずにも関わらず、ビリオネアの数は78人から105人へと大きく増えています。少なくとも、このデータ上、ロシアの大富豪たちにとって、「プーチンの戦争」はむしろ追い風になっているように思えます。なんとも納得のいかない気持ちになります。


ビリオネアの国別資産総額

  1. 米国  4兆4908億ドル (-2103億ドル)
  2. 中国(香港・澳門含む) 2兆0192億ドル (-3286億ドル)
  3. インド 6748億ドル (-750億ドル)
  4. フランス 5900億ドル (+400億ドル)
  5. ドイツ 5854億ドル (-226億ドル)
  6. ロシア 4735億ドル (+1825億ドル)
  7. カナダ 2451億ドル (-459億ドル)
  8. イタリア 2156億ドル (+211億ドル)
  9. スイス 2063億ドル (+244億ドル)
  10. 英国  2020億ドル (+19億ドル)

    ※カッコ内は昨年との比較

10位英国の後は、豪州(1835億ドル)、メキシコ(1689億ドル)、ブラジル(1604億ドル)、と来て、次が日本(1511億ドル)です。


国ごとのビリオネアの資産合計額で見ても、ロシアはその額を大きく増加させており、昨年比で1.5倍以上に伸びています。これに対し、米中両国はともに減らしており、特に中国の減少は金額としても割合としても上位10ヶ国中で最大となっています。どうやらこの一年、最も強く逆風を受けたのは中国のビリオネアたちのようです。


業種ごとの各国比較

続いて、今年も昨年に続いて、業種ごとに、各国のビリオネアの資産合計額を比べてみましょう。まずはテクノロジーです。

首位の米国が全体の6割、2位の中国と合わせると8割を占める圧倒ぶりは、昨年と変わりませんが、中国が16%から19%にじわり増え、その分、米国が減っています。また、上位10ヶ国で95%を占める状況も昨年と変わりませんが、今年は日本がその末席に食い込みました。

次に「金融・投資」を見てみます。米国の独走ぶりは変わらないどころか、むしろ増しており(59%→62%)、2位の英国以下はもはやどんぐりの背比べと言うしかない状況です。そして、ここでもロシア(のビリオネアたち)は昨年の10位から3位に躍り出る堅調ぶりです。なお、日本は「金融・投資」に分類されたビリオネアがゼロのため、「その他」にも入っていません。

次は「ファッション・小売」です。アルノー氏がトップビリオネアになったフランスが、昨年よりさらに米国との差を縮め、米仏両国がほぼ互角となっています。昨年の記事にも書いたとおり、この分野では欧米企業のブランド力がかなり強力ということでしょう。

最後にもう一つ、製造業を見てみます。
この業種も、昨年と大きな違いはなく、「世界の工場」中国が、2位の米国以下に大差をつけて首位を堅持しています。ただ占有率は44%→38%とじわり減っており、米国、インド、英国、インドネシア、そしてロシアなどが占有率を少しずつ増やしています。ここでもロシアは昨年10位から5位へと大きく順位を上げています。

人口当たりで各国のビリオネア人数を見てみる

これまで、国別にビリオネアの人数や資産額を見てきましたが、しかし、そもそも国によって母数となる人口は異なります。1位と2位の米中両国だけを見ても、その人口は米国が3億、中国が14億と4倍以上の差があります。ビリオネアになれるかどうかに「運」つまり確率の要素があるとすれば(我々凡人はそう思いたい、つまり、「億万長者だって運が良かっただけだ」と思いたいわけです)、母数が多ければビリオネアも多くなりそうです。そこで、少し視点を変えて、人口千万人当たりのビリオネア人数というのを算出してみました。各国の人口データは国連推計値(2020-2021)を基本とし、それがない場合は直近の調査値を用いています。

1 モナコ 782.27
2 リヒテンシュタイン 255.42
3 セントクリストファー・ネイビス 211.89
4 ガーンジー(英王室属領) 158.94
5 キプロス 89.29
6 シンガポール 64.18
7 スイス 47.15
8 スウェーデン 37.57
9 バルバドス 37.06
10 イスラエル 32.56
11 アイスランド 27.12
12 ベリーズ 23.25
13 ノルウェー 22.26
14 米国 22.15
15 台湾 22.06
16 豪州 18.26
17 アイルランド 17.98
18 カナダ 16.47
19 レバノン 15.87
20 ドイツ 15.16

これをもとに世界地図を色分けすると、この記事の冒頭の地図(ビリオネアの人数による色分け)とは、だいぶ様子が異なります。
人口千万人あたりのビリオネア数で色分けした世界地図

分母が人口という計算の仕組み上、人口が非常に少ない小国が上位に来やすくなります。ビリオネアがたった一人でも、人口が少ないので、千万人当たりで計算すると数百人規模に膨れ上がるわけです。そのような特別な国は別として、シンガポールやスイス、スウェーデンなどが高い数字を示し、米国や台湾が約22、豪州やカナダ、ドイツが15~18あたりです。他の先進国を見ると、イタリアが10台、英国が7台、フランスが6台、日本は3.18で先進7ヶ国中最下位(最近この言葉をよく聞きます)、韓国の5.79、中国の3.96を下回ります。

人口あたりのビリオネアの多寡がそのままその国の経済力をわけではありません。ビリオン(10億)というボーダーに何の必然性もない以上、ビリオネアは少ないが、ミリオネアは多いという社会だって理論上有りえます。そもそも、突出した大富豪はいないが、みんな等しく豊かだという社会のほうが望ましいとも言えます。が、ともかくも、今の日本はビリオネアの少ない国になっていることは事実です。上述のように、ビリオネアになれるかどうかを確率の問題と考えるなら、日本はビリオネアになれる確率の低い国ということになります。