現在、神戸市立博物館がリニューアルを記念して「神戸市立博物館名品展 -まじわる文化、つなぐ歴史、むすぶ美-」を開催しています。




神戸市立美術館については、過去に「南蛮美術・古地図企画展」を紹介する連作記事を書いています。


その後、神戸市立博物館は、大規模改修のため約2年のあいだ長期休館していましたが、先日11月2日に晴れてリニューアルオープンし、今回の名品展の開催となったのです。


エントランスには市立博物館を代表する収蔵品のひとつである、「南蛮屏風」の「複製」が展示されています。


南蛮屏風高精度複製


「なんだ、複製か」とあなどってはいけません。最先端技術を結集した一大プロジェクトとして作製されたものですので、本物とまったく見分けがつきません。



2階の第2会場には、ちゃんと本物の「南蛮屏風」も展示されています。


南蛮屏風

南蛮屏風


本物と複製の同じ部分を比べてみましょうか。




上が本物、下が複製です。違いがわからないのは画像の精度が低いせいだけではありません。おそらく実物を見ても区別がつかないはずです。嘘だと思ったら、ぜひ実物を見に行ってみてください。


次にご紹介するのは、今回の展覧会で僕が一番見たかった「泰西王侯騎馬図屏風」です。


泰西王侯騎馬図屏風



これもこの博物館を代表する南蛮美術の名品で、僕もずっと昔から一度実物を見たいと思っていたのですが、2年前に訪れた「南蛮美術・古地図展」のときは修復中だか何だかで、展示されていなかったのです。


「泰西」とは西洋のこと。西洋の君主たちが馬に乗って一騎打ちしている様子を描いています。人馬を描く陰影法などの表現技法は西洋画風ですが、背景の金箔や岩絵の具による彩色は日本画式で、独特の雰囲気と魅力があります。17世紀初め、キリスト教が本格的に禁止される以前に、イエズス会の設立したセミナリオで学んだ日本人絵師によって製作されたといわれています。4人の君主は左から、神聖ローマ皇帝のルドルフ2世、オスマン=トルコ帝国のスルタン、ムラト2世、モスクワ大公国のイワン雷帝、モンゴル後裔国家のハーン、だと言われています。トルコやモンゴルなどの異教徒の王と対峙するキリスト教国の君主というモチーフですが、そんな設定がどうでもよくなる迫力とかっこよさです。長年の夢がかなって実物を見ることができて興奮が止まりませんでした。


個人的には「泰西王侯騎馬図屏風」を見るだけでも、この展覧会に行く価値があると思いますが、ほかの名品もいくつか紹介しておきます。


神戸市立博物館といえば、これ、ザビエルです。


フランシスコ・ザビエル

みなさん、教科書で絶対一度は見たことがあると思いますが、「なんで心臓が外に飛び出しているの?」とかいろいろ疑問を持ったのではないでしょうか。今回の展覧会では、このザビエル像にこめられた意味を解説したパネルが一緒に展示されているので、それを見ればきっと長年の疑問を解決できることでしょう。


市立博物館が誇る古地図コレクションについては、2年前に訪れた「南蛮美術・古地図展」で大々的に展示されていましたが、2年前に展示されていなかったものもいくつかあって、この紙製の地球儀もそのひとつです。



鶴亭や熊斐、佚山、諸葛監、宋紫石などの南蘋風花鳥画もたくさん展示されていました。そのうちからひとつ、熊斐の「清泉白鶴図」をご紹介しておきます。


熊斐「清泉白鶴図」


工芸品もあります。これは昭和初期に作製された「紅塵荘ステンドグラス(円形獅子紋)」です。



これは江戸時代の正徳年間に長崎で製作されたガラス製の四段重です。



ライトブルーに透き通るガラスの美しさはとても三百年前のものとは思えません。


市立博物館には考古資料や出土品も収蔵されています。その中核をなすのが神戸市灘区の桜ヶ丘遺跡の銅鐸・銅戈群です。


桜ヶ丘遺跡の銅鐸


銅鐸というと青緑に錆びた姿を思い浮かべると思いますが、当然ながら製作された当初は錆びていたわけではないので、本来は上の写真の右端の銅鐸のように黄金色に輝いていたのです。製作当初を復元したこの銅鐸の神秘的な輝きを見ると、これが祭祀に用いられたのも納得できます。


一部の展示を除いて、基本的に写真撮影可能(フラッシュは禁止)だったので、興奮気味に写真を撮りまくってしまったのですが、到底すべては紹介しきれません。国宝や重要文化財を含む名品たちを一度にまとめて鑑賞できる機会はなかなかないと思うので、興味のある方は行かれてみてはいかがでしょうか。開催期間は12月22日(日)まで。一部の展示品は前期(~11月24日)と後期(11月26日~)で入れ替えがあるので、前期と後期で2回行くというのもありだと思います。